みんなでつくろう『リコリス・ピザ』オリジナルサウンドトラック

*これから観るぞ!という人は前半無視してください。

観てきましたポール・トーマス・アンダーソン(PTA)最新作『リコリス・ピザ』(PTA作品U-NEXTにたくさんアップされてて予習復習にも最適)。最初に「PTA最新作!」、「ハイム姉妹主演!」、タイトルは「リコリス・ピザ!!」と知った時は姉妹が一枚のピザを巡ってL.A.中を駆け巡りバトるドタバタコメディかな?と思ったけど全然違いました。はい。

結論からいうと非常に「映画らしい映画」で、所謂「説明語り」を省いたうえで想像力と淡いノスタルジーを時にやさしく、時にガンガン刺激してくる、とりわけ初期PTA大好き人はもう手放しで愛でられるのではないでしょうか。故に日本のトレイラーは非常に誤解を生みやすい作りになっているし、PTAを知らずに見に行った人は「求めていたのと違う!!」とお怒りになる気持ちも察せなくは無い(別に過去作観てなくても十分面白いと思うけど、意味わからんと思う人は途中で真剣に観るのを諦めてしまった人かもしれない)。

プリミティヴな映画、といえば大ヒット中の『トップガン マーヴェリック』なんて、劇中で何するか、過去になにがあったか丁寧に説明したうえでカタルシスとアクションとエンターテイメントに火力全振りした潔良すぎる「ザ・ハリウッド映画」であり、リコリス・ピザとは全く異なる様で、「プリミティヴ」という意味では表裏一体ともいえるかもしれない。(トム・クルーズがセックスカルトの教祖を演じたPTAの『マグノリア』は最高です。)

 ところでもっとフィーチャーされてもいいと思うHaim姉妹の演技、というか存在感が本当にすばらしい。刹那的恋愛に揺れ動き、実存的不安にさいなまれるアラナは言わずもがな、煙草をふかすだけで絵になるダニエルと、いい歳して母親にひざまくらしてもらうエスティの、多くは語らないが末っ子へ向ける眼差しと、素を地でいくキャラクターが絶妙。まあ実の姉妹なんだし、PTAと姉妹の短くない蜜月を思えば今作に始まった事では無いが、「本業ミュージシャン」とは思えぬ立ち回りで釘付けであった。

沢山あるけど個人的なハイライトは、

1. The Doors "Peace Frog"が長尺で流れたとこ
2. ショーン・ペンとトム・ウェイツとアラナが同じ時、同じ場所に其処にいた瞬間
3. 終始サタデーナイトフィーバー状態のBee Gees風ブラッドリー・クーパー
4. アラナの大ビンタ
5. エスティの変顔が発動しそうでしなかったが最後まで期待していた自分
6. 終盤の謎のヒッピー

6.に関してはチェーホフの有名な「物語の中に拳銃が出てきたら、それは発射されなくてはいけない」、つまり「ストーリーには無用の要素を盛り込んではいけない」というロジックをひっくり返してみせたりしたのだが(ワンハリのマンソンもそうだったか)、そういった細やかなトリックは『リコリス・ピザ』には沢山あって、嫌味なく観客をサスペンス(=つるし上げる)するPTAはやはりえげつないストーリーテラーだなと再確認。『ブギーナイツ』から全作おさらいしてもう一回観に行きたい。

折角なので(なにが折角なのか)「みんなでつくろう『リコリス・ピザ』オリジナルサウンドトラック」と冠して妄想サウンドトラック作ってみました。映画のシーンを思い出しつつ、とりわけ曲のタイトルにひっぱられつつも、映画の雰囲気に拠った、が、本編にはまったく関係ありません極めて私的なリストなのでクレームは遠慮させていただきます。あ、オフィシャルのサントラはぜったい入荷させますので。

 

*アーティスト/タイトルクリックで商品にトベます

FELT / Whirlpool Vision Of Shame

 


ST. VINCENT / The Melting Of The Sun

 


TESS PARKS / Happy Birthday Forever

 
GABRIELS / LOVE AND HATE IN A DIFFERENT TIME


DURAND JONES & THE INDICATIONS / Love Will Work It Out

 


HEALING POTPOURRI / Think About Us

 


MATT MALTESE / You Deserve An Oscar

 


L.A. WITCH / Fire Starter

 
LIAM KAZAR / No Time For Eternity


THE LAZY EYES / Imaginary Girl


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