special interview : JUTERUS

当店主催のパーティー『GRINDHOUSE』、Vol.3のメインゲストはJUTERUS。

といってもまだ知らない人の方が多いと思いますが、私ですら存在を知ったのは最近の事で、もともとオンラインでレコードを買ってくれた事が出会いのきっかけでした。

時同じくして彼女がトラックメイカー / アーティストである事を知り、早速紹介いただいた楽曲を聴いてみると、あら、こりゃたまげた。ディープ&クールなトラックに、本人曰く"宇宙語"で歌われるミステリアスなボーカル。

インタビュー内でも言及してますが、極めて「世界水準」な楽曲群に、

「この人のレコード欲しい!!」

と直感的に思わされた程。

嬉しい事にチェコのレーベル〈Moving Pictures〉(アートワークに非常に強いこだわりと美学を感じるレーベル)からヴァイナルリリースが決定しているので、まもなくその願いは叶う訳ですが、同時にLiveも観てみたく、戦々恐々声掛けさせてもらった所、JUTERUS側もLive欲が沸いていたらしく、ならやりましょうぞ!という運びになりました。

尽きぬ興味は募るばかり、という事で僅かでもそのミステリアスな存在を紐解きたくメールインタビューを敢行。非っ常に聡明で思慮深いアンサーをいただいてますので是非じっくり読んでみてください。

 

 

Q.まず最初に、JUTERUS=ジュテラスとお呼びしてよろしいでしょうか?

はい、ジュテラスです。 子宮を英語の医療用語でUTERUSと言います。このUTERUSっていう言葉の響きが女性的でグラマラスで素敵だなーと思って。名前のJUNKOを足して、JUTERUSとなりました。

 

Q.出身地はどちらでしょうか?

熊本です。

 

Q.音楽との出会いは?

幼稚園の頃から歌う事が好きで、音楽が好きとかそういう見方ではなく、この曲歌いたいなと か、この人の声を真似したいなとか、そういう対象として音楽を捉えてた。 中2ぐらいの時、友達のお姉さんが聴いてたSadeの"Kiss Of Life"に衝撃を受けました。 声が軽くなくてしっかりと重くて深みがある、かっこいいし、夜の香りがして、大人の感じがし て、ブラックコーヒーを初めて飲んだ、そんな感覚でした。 あまりの衝撃と感動に、泣きました。 世界って凄い音楽がいっぱいあるのかもしれないとワクワクしました。 それからはBlack Musicにドップリどハマりしました。 高校生活は音楽漬けです、レコード収集スタートですね。

Q.初めて買ったCD,レコードはなんでしょう?

Sade "Smooth Operator"、 BT Express "Do It"。

 

Q.トラックメイクを始めた時期、そもそもきっかけはなんだったんでしょう?

ここ2,3年前からです。それまではパソコンも持ってなかったし、楽器もほとんど出来ない。 以前の音楽活動はアコースティックなバンドで歌っていただけでしたから。 妊娠していたときにお腹の子の心音を聴いているとBPM(Beat Per Minute=曲のテンポ)140ぐらいで。 今ままで興味もなかったBPM120~140の曲を聞くようになって、Techno、Trans、 Electro系を。どハマりです。 最初はAKAIのMPC2000でトラック作っていたんですけど、もっと密な音を絡ませたいと欲求が 高まり、パソコン購入、DTM勉強しながらトラックメイクスタートさせました。

 

Q.好きな音楽家、デザイナー、映画、本、など教えてください。いくつでもOKです。

ミュージシャンで言うとNina simon、Erykah Badu、Sade、Rhye、Moses Sumney、Sohn、 Christian Loffler、Kiasmos、bonobo、Henry Green

好きなデザイナーはAlexander McQueen。 洋服への固定概念を壊してくれた人です。 洋服とは、着心地とか、合わせやすさとかシーンに合わせて選ぶものだと思っていました。 だけど彼は着る人のことより、自分の世界観や、表現したいものを最優先させた。 世の中で起っている悲惨な事件に蓋をするんじゃなくて、ファッションという蛇口を使って、表舞台にあえて出して、エグく露出しちゃう。 怖い程の美しさのギリギリのラインを綱渡りするかのように責めてくる。 洋服への概念が崩れ落ちましたね、常識を覆すパワーを感じた。 煌びやかで綺麗が正解だとされてきたファッション界の異端児、亡くなった今でも1番好きで す。 洋服大好きだから、いつかファッションショーの音楽を担当したいという目標もあるので、今は いろんなデザイナーの考え方や世の中へのメッセージなども知りたいなと思っています。 ファッション業界も音楽業界もアート業界も、自分たちの役割を理解し、未来に続く新しい道を 開拓していかなければいけない。 私も一緒に歩んでいきたいと思っています。

映画だと今はドキュメンタリーを多く観ますね。デザイナーや音楽家のもの。 先人たちが伝えてくれているメッセージを受け取りたいから。 自分の生き方に反映させて、自分も続きたいという気持ちがあります。

好きな本はスピリチュアル系の本が好き。(さとうみつろう氏、大木ゆきの氏、雲黒斎氏など) 植物、ハーブの図鑑とか好き。 ファッションの写真集や建築物の写真集。

 


Q.どういった経緯でAlffo Recordsを知っていただけたのでしょうか。また利用してみてどのような印象でしたか?

インスタ で見つけて、凄いコアなレコード置いてるなーと、すぐフォローしました。 いつか、レコード買いに行ってみたいと思っていました。 次はどんなレコードが入荷してるんだろうってワクワクしてみてますよ、いつも。

 

Q.最初に何曲か曲を聴かせてもらった時、常にクールで、時にサイケデリックで、時にクレイジーででも総体的に美しくて。それこそUK、EU圏のアンダーグランドクラヴミュージックや、急進中の韓国の女性トラックメイカー(Park Hye Jin, Peggy Gouなど)とリンクしましたが、作曲のインスピレーションはいつもどこから得ているのでしょうか。

作り出す前に、どんな曲を作りたいのか?を考えます。 私は、ビジュアルから多く影響を受けています。 例えば、アバンギャルドな洋服や、鉱石、建築物、美しい骨格や、花や昆虫などの図鑑など。 写真をパソコンの横に置いて、見ながら曲を作る事が多いです。

 

Q. 最初から自身のボーカルを曲に組み込むスタイルだったのでしょうか。

私の武器は声です。 声を使って曲を構成しています。 メロディーを録って、波形を適当に切って、それを美しく並べる。 視覚的な直感に従う事も多い、すると、自分では思いつかないメロディーやリズムが産まれてく る。 その偶然性がたまらなく面白い、今はそんな感じで制作してます。

 


Q.Instaをはじめ、ビジュアルに対して非常にアーティスティックで高い美意識を持っておられ、自己プロデュース力の強さも伝わってきます。
ビジュアルへのこだわりを教えてください

男性性と女性性のバランスでしょうか。 あと、シャープなラインやかっこいいスタイルは、変わらず好き。 その中に少し甘さやスパイスを加えて、時代の空気感を取り入れたりする。 自分の中にあるセンスを常に試したいと思っているし、更新したいという欲求もある。 マックイーンから学んだ、美しさの中に存在する、恐ろしさやリアル、エグミの部分も恐れず、チャ レンジしていきたいなと思う。 ビジュアルは結局、内面の現れだと思うから、内面も同時に成長させていきたい。 本当の美しさとは?自分にとっての幸せとは?ここを更新、進化させていかないと、ビジュアル も進化できない。 自分がどうありたいのか?を常に問い、ビジュアルを整えていく必要がありますね。
insta : juterus_music

 

Q.間もなくチェコのレーベル〈Moving Pictures〉からアナログがリリースされますが、収録曲についてのお話できる事があればお願いします。

去年の10月にリリースが決まって1年越し!海外レーベルはリリースまで時間がかかるんです よ。 JUTERUSは最初から海外のレーベルでリリースするんだって決めてて。 初めて送ったレーベルで決まりました。奇跡ですね。 最初は、デジタル音源のみのリリースだったんだけど、レコードリリースが決まった時は、酔っ 払って踊りましたよ、嬉しくて。 自分のレコードをリリースするのが夢の1つだったので。 1曲目は"Reality"という曲で、コロナ 流行中に作った曲で、世界中がコロナ のニュースばかり だったので、ワクチンの名前とか会社の名前とかをカタカナ文字にして歌詞にしました。 2曲目は"Plastic Popcorn"、カタカナのコロコロ転がる響き遊びで作りました。 わざとPopな軽さを表現しました。 とても暗い空気感が世界中に広がっていたので。 海外では、日本語の響きがメジャーではないから、面白がってくれるかなと思って挑戦してみまし た。 Moving pictureは、レーベルとデザインもやっている会社なので、レコードジャケットの出来上 がりが楽しみです。 あと、2曲それぞれDJがリミックスしてくれるのでそれも楽しみです。

 

Q.日本で、かつインディペンデントで音楽活動をしていて思う事、いい事、悪い事、何でもいいので教えてください。

まだJUTERUSで活動始めたばかりなので、意見できるほどの経験があまりないのですが。 とにかく身内で固めてしまうように見えました。 新入りが飛び入りとか、あまり現実的に無い印象。 実績がないと話も聞いてもらえないし、面白がってくれる人も少ない印象。

 

Q.JUTERUSにとってVinylの魅力とはなんでしょう?

【ART】です。 音楽を買うというよりも、アート作品を買う意識です。 だって音楽を買うのなら、デジタル配信で事足りるじゃないですか。 ジャケットには、アーティストが何を考えや、何が好きなのかを視覚的に見せてくれる。 アーティストの目に映る時代の色も表現している。 ジャケットは音楽と同じように大切だと思います。 音楽の聴き方も、ながらで聴くんじゃなくて、レコードという手のかかる子を世話しないと聴け ないじゃない?音楽に自動的に集中させる感じがたまらない。 没入できる、その時間が人生に艶を与えるから好きです。

 

Q.最後に大阪でのLive非常に楽しみにしています。大阪(関西)で行きたいところがあれば教えてください。

街の活気や空気を味わいたい。 ALFFO RECORDでレコードを買いたい。ライブ終わって乾杯したいかな。 音楽以外、そんな興味ないんですよね。

...end

 

インタビュー後、少しだけ電話で話させていただいたのだが、まるで旧友との会話の如く違和感無くお話できて驚いた。メール、会話していて最も共感した部分は、

「美しさの中に存在する、恐ろしさやリアル、エグミの部分を表現する」

という部分に集約されていて、例えば、

「映画『時計仕掛けのオレンジ』からあの過剰な暴力表現を取り除いたらそれは無価値に等しい」

と語った映画評論家高橋ヨシキ氏の言葉にも通じるものがある。

つまり、受け手に喜び、怒り、悲しみ、恐怖、トラウマ、何でもいいけど強烈な体験を与える事が出来るモノこそが「アート」であり、「表現」であり、フィクション(創作)の力である、という美学をJUTERUSの言葉から十分に感じる事ができた。

12/3、是非彼女のプレイを体験しにきてください。この規模感で観れるのはマジで最後かも。

補足)米国出身のMIGHTWHALES、今回オープニングをまかせるarataも私大大大好きなDJ。つまり全編ハイライトでお送りする所存です。

 


Alffo Records Presents
『GRINDHOUSE』

2022.12.3 (sat)
Open 19:00~ Door 2,000yen

Guest:
JUTERUS (Live)
MIGHTWHALES

DJ:
arata
AVE
KINUTRIA
ナカシマセイジ


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